世界の文字の種類について
他の言語を学習したことがある人は文字システムの違いに気づくことがあると思いますが、世界の言語にはいくつかの文字のシステムがあるのでそれぞれ紹介していきたいと思います。
Alphabet アルファベット
音素を表す文字のことをアルファベットといいます。
例
キリル文字:ロシア語、ウクライナ語、ブルガリア語など
съто /sŭto/ (古代教会スラヴ語)
ラテン文字:ラテン語、ロマンス諸語、英語など
centum /’ken.tum/ (ラテン語)
ギリシャ文字:ギリシャ語
ἑκατόν /he.ka.tón/
例のように、ほとんどの場合アルファベットは音素を表しています。
Abjad アブジャド
子音だけを表す文字のことをアブジャドといいます。
例
ヘブライ文字:ヘブライ語、イディッシュ語など
/ma’tā’/ מאתא (右から読む) (ヘブライ語)
א /ʔ/, ת /t/, א /ʔ/, מ/m/
アラブ文字:アラビア語
/mi.ʔa/ مئة (右から読む)
ة/h(ʔ)/, ئ/j/, م/m/
シリア文字:シリア語
ܡܐܬܐ (右から読む)
/ʔ/, /t θ/, /ʔ/, /m/
例のように、言語自体に母音があるのにもかかわらず、子音しか書かれることはありません。英語にも短縮形として子音だけで表されることもあります(boulevard>>blvd.)
Abugida (Alphasyllabary) アブギダ
アブギダは子音と母音で成り立つ文字で、子音の文字をもとに形成されます。南アジアの言葉に多く見られる文字です。
例
タミル文字:タミル語
நூறு /n̪uːrɯ/
ந் /n/, ஊ /uː/ >>> நூ /n̪uː/
ற் /r/, உ/ɯ/ >>> று /rɯ/
ヒンディー文字:ヒンディー語
सैकड़ा /sɛːk.ɽɑː/
स /s/, पै /ai/ >>> सै /sai/
क /k/
ड /ḍ(ɽ)/, पा /ɑː/ >>> ड़ा /ɽɑː/
クメール文字:クメール語
មួយរយ /muəj ˈrɔːj/
ម/m/, ួ/uə/ >>> មួ /mue/
យ /j/
រ /rɔː/
យ /j/
上の例を見てわかるように、子音の文字が基本になって、母音の文字が要素として子音の文字にくっつく形で形成されます。
Syllabary 音節文字
文字通り、一つ一つの文字が音節を表します。日本語の仮名もここのジャンルに分類されます。
例
仮名文字:日本語、アイヌ語など
ひゃく /hyaku/ (二音節)
ひゃ /hya/
く /ku/
チェロキー文字:チェロキー語
ᏍᎪᏗᏔᏭᏈ /sgoditawuqui/
Ꮝ /s/ Ꭺ /go/ Ꮧ /di/ Ꮤ /ta/ Ꮽ /wu/ Ꮘ /qui/
Semi-syllabary 音節文字+アルファベット
Semi-syllabaryの文字システムはアルファベットと音節文字両方の要素を持っています。
例
イベリア文字:イベリア語(1~2世紀ごろに絶滅)
破裂音(k,g,t,d,b)の場合は母音と組み合わせるときには音節文字のように一つの文字で表します。
そのほかの子音(s,r,l,m,n)は母音と組み合わせてアルファベットのように2つの文字で表します。
仮名文字も外来語を表すときにアルファベットのような使われ方をすることがあります。
ヴォイス /voisɯ/
ヴォ/vo/
Logography 表語文字
言葉や文章を表すタイプの文字です。漢字はこのタイプの文字になります。
例
ヒエログリフ:エジプト語(典礼言語として宗教の場面などで使われる)
コブラ
r n k m t
上のように、アブジャドのように子音だけで表す文字として使われることもあります。
Featural 素性文字
素性文字はその音の弁別的素性を表した文字です。
ハングル文字:韓国語
백 /baek/
ㅂ/b/ >>>発音されるときの口の形からㅁ/m/になったㅁからできた文字
ㅐ/ae/ >>> ㅏ /a/ + ㅣ /i/
ㄱ /k/ >>> ㄱは発音されるときの舌の形を示しています。
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